good bye daddy

独りよがりの忘備録

21.初盆は台風直撃?

台風が来る。一日何回も台風の進路予想を見るけど、田舎に向かってやってくる。予定では12時にご飯を食べて午後2時にお寺集合。その後、お墓に行くことになっていたけど台風は午後2時に実家の真上を通る。お寺から「危ないので延期しましょう」とか連絡はないのかとイライラする。田舎の人って、割とそういう危機管理は甘いと思う。何があっても何とかなるやろと言う空気が漂っている。田舎の人はいいかもしれないけど、2時間もかけて高速道路を使って帰る私らはどうなるんよ。

色々、シミュレーションをする。妹夫婦は朝から車で帰る。私は出勤しないといけないので、シフトを早番にしてもらって、夕方、JR又は高速バスで帰る。微妙だ。最近、JRは早め早めに止めるんよ。それも特急から。じゃあ、高速バスか?あの高速道路も山の上の風がきつそうなところばかり走るしこれも微妙だ。

ところが、前々日に息子だけが車で我が家に帰ってきて、翌日、新幹線で嫁が来て、仕事が終わった私と合流して一緒に帰るという案にストンと落ち着いた。台風ものろのろしているので影響はなくスムーズに帰れた。

そんなこんなで夜8時過ぎに実家到着!

明日は台風だからお墓に行けないかもしれないってことで、夜8時半過ぎに家にも入らないでそのままお墓に行くことになる。本当は7時半くらいに着いて、ギリギリ真っ暗になる前にお墓に行けるはずだったのだけど、嫁の買い物に1時間かかってしまったので全てが1時間遅れ。お墓、新しいところに引っ越しておいて良かったなぁ。山の上のお墓だったら、怖くて絶対に行けないわ。

でも、お墓はお墓。8時過ぎでも周りに家も街灯もないし怖い。すぐそこなのに車で行ってライトをお墓に向けて照らして、手には懐中電灯。先頭を歩いていたら、頭に何かがパシーン!と当たってきた。「きゃー!!」私の声に、後ろに続く人が驚いて順番に「きゃー!」「きゃー!」「きゃー!」。リアル肝試し。頭にぶつかってきてそのままへばりついていたのは、懐中電灯の明りに引き寄せられた蝉だった。妹の婿が手づかみで追い払ってくれたけど、明るいところへはすぐに寄ってくる。

 

さて、初盆の法要の当日、台風がやって来る日。

人数も母はもっと多く呼んでいたようだけど、直前になって遠方の人には断りを入れ、当日の朝には峠が一つ通行止めになってしまったので叔父にも断りの電話を入れた。姪夫婦と甥夫婦も来る予定だったのがドタキャンで、お昼はお弁当を頼んでいたのを多少の人数変更に対応できるようにオードブルに変えていた。

一日中雨だったけど、それほどの土砂降りにはならず、風はほとんど吹かなかった。ほんとに台風?

ただ、翌日出勤するために夕方実家を出た息子夫婦。気になって雨雲レーダーをずっと見ていたら、車が走っているあたりを土砂降りの雨雲が同じように移動していて、それはちょっとかわいそうだったな。

 

20.納骨

田舎の妹からLINEが来た。

「今度の土曜日に納骨するんだって」

え?!

私は2泊3日の仙台一人旅で、ホテルの部屋でホッと一息ついたところだった。仙台に来ることは妹たちに言っていなかったので、お互いにびっくり!伊丹空港に夕方着く飛行機で帰るのに、同じ日の午前中なんて・・・。無理。お坊さんも7月・8月は忙しくて無理って言ってたやん。

母も別に誰かに来てほしかったわけではなく、田舎の妹も仕事だったし、真ん中の妹がたまたま休みだったので急遽参加してくれた。お花を供えたお墓の写真を送ってくれたけど、普段着にお念珠を持った母の後ろ姿がチラリと写っていた。喪服で勢揃いのイメージがあったのに、全然、違う。そんなに急がなくてもいいのに、母はずっと家にお骨を置いておくのが嫌だったみたい。今更だけど、母は父のことが嫌いだったんかな。

でもまぁこれで、父の納骨とご先祖様のお引越しは終わりやな。また一つ仕事が片付いた。

と思ったら、とんでもない!

山の中の古いお墓だけど、一段高いところに実家だけではなく一族のご先祖様のお墓があることがわかり、これだけは実家だけの一存で勝手に動かすわけにはいかないことがお坊さんから告げられたらしい。実家だけでお世話していたお墓なので、全員が実家だけのご先祖様だと思っていた。

古い家なので、家を継ぐためだけに子供ができなかったら養子に行ったり来たりしていて、ずーっと続いている家系。実家ともう一軒の親戚とどっちが本家か、祖父が生きていたころはいつも揉めていたらしい。頼りのお寺は、一度火災に遭い過去帳が燃えてしまっている。私は家とお墓の立地条件から想像して実家が本家かなと思うのだけど、もう一軒の親戚には蔵が2個もあるんよ。それはちょっとポイントが高いような気がする。

何百年も大事に守り続けられた〇〇家だけど、私たちの代で終焉を迎える。私たち三姉妹は結婚して名字が変わっているし、もう一軒の○○家は女の子二人が結婚して出て行って、唯一実家に残った長男は40歳過ぎても独身。これから結婚して子供ができるとも思えんし。あんなド田舎で、母親と二人暮らしの長男。お世辞にもカッコいいとか高収入ではないし、言っちゃ悪いが絶望的だと思う。

こうやって○○家は絶えるんだわ。

 

19.新しいお墓

土日の作業で新しいお墓が完成したと、田舎に帰っている真ん中の妹から画像が来た。ええやん!思い描いていた通りのお墓ができていた。左隣が昔のお墓を移動させてきた古いお墓なので、出来立ての新しいお墓は目立つ。右隣はまだ空いているけど、どんな人がどんなお墓を建てるのか妙に気になるわ。

古いお墓は、お坊さんに拝んでもらって性根抜き(しょうねぬき)をしたという。性根抜きをすると、墓石はただの石になるとか。

古いお墓に入っていた人たちの魂は、もう新しいお墓にお引越しできたんやろか。その辺をふらふらしているのか、お寺に一時預かりなのか、その辺は全くわからない。これは妹たちに聞いても、わからんやろな。

古い墓石を処分してもらったら、一つ仕事が終わる。支払いは田植え機やトラクターを売ったお金で足りるんやろか。お財布は母がガッチリ握っているのでどういう経済状態かわからん。「普通のままだと怖いし、定期にしよかな」と言ったことがあるらしいけど、田舎の妹が速攻で止めたという。父の定期を解約するのが面倒だったから、もうお金はすぐに出せる普通しか嫌だって。

 

そしてまた一つ、署名が必要な書類があるらしい。印鑑証明書もいるというので、早速、区役所に行ってきた。何の書類だろう。言われるがままに印鑑証明書を渡して、署名して実印を押しているけど、こんなんでいいの?

18.ちょっと余談

その1

 

父が亡くなる前後、私は12日間実家にいた。

実家のトイレは娘婿が「最新式だ」と驚くくらい至れり尽くせりで、トイレに続く廊下は人の気配を感じて天井のライトがつき、トイレもドアを開けると自動でライトがつく。自動で便座の蓋が開き、用が済むと自動で流れて蓋が閉まる。蛇口に手を差し出すと水が出て洗い終わると止まる。トイレも廊下もライトは自動で消える。トイレの電気の消し忘れなんてことはあり得ない。

 

人間て、慣れる生き物なんよ。

 

12日間、そんな生活を送って自分の家に帰ると、トイレのドアを開けて「あれ?電気・・・。あ、そうか」とスイッチを入れなあかん。蓋も自分で開けなあかん。終わったら自分でレバーで流して自分で蓋を閉めなあかん。つけた電気は消すのを忘れる。

 

慣れるって怖いわ。

 

 

その2

 

田舎で、どこかの家に車がたくさん止まっていると、葬式か法事らしい。実家の近くの空き地は、ご多分に漏れす葬式の日も四十九日法要の日も、関係者の車でいっぱいだった。

 

四十九日法要の日、そこに一台の黒いベンツ。

 

みんな横を通りながら「あ、ベンツだ」「ベンツだ」と小声で言う。都会ならいいけど、熊や鹿のほうが人間より幅を利かせている山奥で黒のベンツ・・・。

 

目立ちすぎる。

 

姪夫婦が義父から借りて乗ってきたのだけど(義父から使っていいよと言われたらしく、会社名義のものかも知れない)、乗り慣れない車で姪はゲロゲロに酔って、お腹までキュルルルルってなって、着くなりトイレに駆け込んでいた。

「この車に乗っていると、みんなが道を譲ってくれるしええわぁ」と普段は軽に乗っている姪。

 

でもね、田舎には黒のベンツでは来んといて。

17.さらば農機具たち

田んぼを作らないと決めたら、田植え機・コンバイン・トラクターなど、一刻も早く手放したくなった。最新式の農機具を個人で持っているのは、このあたりでは父だけだった。それも全て新品で買っている。少しでも新しいうちに高く売りたい。四十九日が過ぎると、すぐに3社に査定してもらった。

時期的に一番最初に売れたのは田植え機、自走式草刈り機、肥料など。隣村の人で、数人で田んぼの共同経営をしている人らしい。その後、たぶん同じ人だと思われるがトラクターも買ってくれたと妹からLINEが来た。隣村なので自分で運転して持って帰ってくれる動画も送ってくれた。よく晴れた日に緑の中を遠ざかって行き、T字路で左に曲がり木に隠れて見えなくなる動画は、思わずドナドナを歌いそうになる。

コンバインは秋に使うものなので、秋口に売れるらしい。それとお米専用の大きな冷蔵庫が3個、それも秋くらいに売るらしい。この冷蔵庫たちのお陰で電気代がバカ高く、関西電力から「年寄り二人にしては電気代が異常に高い」と言われ妹が説明に行かされたこともある。

電化製品を買うのが好きだったので、テレビなんか各部屋にあるから4台もある。物置を片づけたら、ジューサーミキサーが台所にあるもの以外に2台も出てきた。どこに片づけたのかわからなくなって、探すよりも先に買ってしまうらしい。何と言う性格や。

あとは、数年前に買い替えたばかりの軽トラ。売るのかと思ったら「防犯上、こういうのは庭に置いてある方がいい」と言い、時々、妹の婿が借りに来ることになった。軽乗用車は、もう10年越えなので、来年、免許証を返納するので廃車にするという。

ラクターはいくらで売れたのか聞いていないけど、田植え機とその他もろもろはちょうど90万円くらいだった。肥料が半値だったのを見た人が「こんなもん、今年使わんでも来年も使えるし、もっと高く売れるのに」と言ったらしいが、そう言うならあんたが買ってくれと言いたい。

農機具を全部売り払って、それでお墓代が出れば超ラッキー。

 

16.お地蔵様

たまたま田舎に帰った真ん中の妹から「お地蔵さんを建てるんだって!」とLINEが来た。下の妹も私も初耳。

「24万円やで!かなりデカい!」と見積書と設計図(?)の画像が送られてきた。って言うか、何でお地蔵さんがいるの?

なんでも、山の上のお墓には子供のお墓があるらしく、そのためにお地蔵さんを新しいお墓に建てるとか。子供のお墓があるなんて知らなかった。でも、誰の子供やねん?

父は子供ができなかった伯父夫婦(実の母親の実家)のところへ養子に来ている。なので、その前の代の人たち(私から見たら曾祖父母の代)の子供?もう訳わからんわ。

設計図を見たら台座を入れた高さが260、お地蔵さんだけでも125と書いてある。260って260㎝?巨大すぎる。しばらく三姉妹LINEはこの話題で盛り上がった。

母は「一番小さい可愛らしいのを頼んだ」と言ったという。

よーく見て見ると、用紙の右上に単位の文字が上半分切れて見える。次にちょこっと見えるのは㎝でも㎜でもmでもない。何なんだ。まさか寸?イラストの上に5,5寸地蔵墓と書いてある。5,5寸だったらだいたい16,5㎝。これは横幅。高さでいうのじゃないんか。単位は寸か。他にも才と言う単位の数字もある。これは調べたら石材の体積を量るときに使うらしいことが分かった。写真を撮るときはそういうところまで写してくれよ。

ちょっとこれは母に電話で要確認やな。

 

15.お墓の引っ越しをしたい

話が前後してしまうが、「山の上のお墓をお寺の横の新しいところに引っ越ししたい」という相談を母からされていた。そりゃ、私は大賛成。川に落ちて亡くなった人の奥さんが「ちょっとお父さんのところに行ってくる」と言って、家の横の道を通って徒歩5分のお墓に行くのがうらやましくてたまらなかったらしい。数年前に、15区画くらい新しい墓地がすぐ近所に整備されていた。土地代だけで30万円。近くなのに知らんかった。お金はあるんか?区画図があったので見せてもらったけど、もう結構埋まっていていいなと思う場所は2カ所しかなかった。なので、四十九日法要の前日、雨が降るのに2回も墓地を見に行って、どんなお墓にするか人様のお墓の写真を撮ってああだこうだと相談していた。元々の和風の古い墓石を移動させてきた家は2軒だけで、あとは田舎には不似合いな洋風のお墓ばかりだった。実家の山の上の墓は一人1基なので200年以上前の人から30基近くあるので、新しい〇〇家の墓を建てることになる。祖父母のお骨は新しいお墓にお引越し、それ以前の人は土葬の時代なので魂だけお引越しをしてもらうことにした。魂を抜いたお墓は、ただの石になるという。

四十九日法要の読経が終わったらすぐに、区画図を見せてお坊さんに希望の場所を伝えた。お寺の帰りに娘夫婦にも土地を見せた。晴れた日に行くといい感じ。少し遅れて息子夫婦もやってきた。あとで聞くと母に「お墓のお守りをするのはあんたなので見てきなさい」と言われたらしい。息子夫婦がお守りをしてくれるとは思えないけど。

夜は、30万円を持ってお寺に行って正式に申し込んだ。色々、墓石の話など聞かせてくれて「黒い石に月が映ると無茶苦茶怖いしやめとき、でも、その黒い石が天然石で小さいけど一番高い」とか「あそこのピンクが買った墓石はまだ若かった女の人が一人で入っている」などなど。

そういう事聞いてから、翌日、墓石屋さんと土地を見に行っていろんな墓石を見ると「なるほどな」と思ったりする。墓石屋さんに、ここがこうでああでと希望を伝える。ここでの仕事は初めてだというので「いいのが建ってたら宣伝にもなりますよ」と言ってみたりする。面識はなかったけど遠い遠い親戚なので、何となくそういう事も言いやすい。下の妹が段差で靴底が滑って後ろ向きにひっくり返って、もう少しでよその墓で頭を打ってあわや流血、救急車要請の一歩手前だったので「こんな段差はいらん!」となる。発注してから40日くらいかかると言われたけど、初盆に間に合うんだろうか。お墓が間に合ってもお坊さんが忙しくなって引っ越しは終わらないかもね。

しばらくして田舎の妹がイメージ図を持って泊まりで遊びに来てくれた。石の見本もあったけど重いので画像だけ。古いお墓はそのまま放置でいいと思っていたけど、母が「そんなわけにはいかん」と言い出して、全部山からおろして処分してもらうことになった。再び言うけど、そんなお金はあるんか?お墓代だけで、140万円の見積もりやで。