good bye daddy

独りよがりの忘備録

5.そして亡くなる

翌日、私は玄関の掃除、看護師の妹が神棚と仏壇の掃除が終わった瞬間、待っていたかのように病院から「血圧が下がってきたので来てください」と電話がかかってきた。田舎の妹の車で一同病院へ。こんな時になっても、病室へは二人ずつしか入れてもらいない。病棟への入り口で待っているとき、見知らぬおばあさんに「うちはお父さんが入っているのにちょっとも会わせてもらえへん」と腕をつかまれて訴えられた。ここでそんなことを私に言われても・・・。

 

母と看護師の妹とすれ違いに、私と田舎の妹が病棟へ。看護師の妹が数字のモニターの画像をLINEで送ってくれていたのを見ると安定しているみたいだったので安心しながらエプロンを付けたり手袋を付ける。一番面会回数が多い看護師の妹は、毎回モニターの画像を送ってくれるので、どのあたりの数字がいいのかわかるようになってきていた。ベッドに近づくと、ちょうど吸引をしてもらっているところだったので呼吸数は多い。終わると16くらいへと落ち着いて行った。「今日初めて担当させてもらっています、〇〇です」と若い看護師さんの自己紹介を聞いて「今日は・・・」って容態の話を聞き終わったところで、頭のほうの医療機器からアラーム音が鳴り響き、いつも画像で見ている医療機器からもアラーム音。看護師さんがベッドのこちら側から向こうに手を伸ばしてアラーム音を消そうとしているみたいだけど手が届かない。「ちょっと!鳴ってるんですけど!」とイラっとしてしまった。そのうち、脈拍の数字がゼロになって赤いランプが点滅し始めた。「ゼロなんですけど!!」ややキレ気味の私。ゼロの意味が分からなかった田舎の妹はすぐにそれを写真に撮って看護師の妹へ送信。

売店辺りでウロウロしていた看護師の妹は、画像を見るなりなぜか母をバシバシたたきながら「ちょっと!ゼロやん!」。叩かれてる母もゼロの意味が分からない。

 

看護師さんはアラーム音を止めて、父の目を指で開けてライトを左右に、テレビで見るシーンだわ。一瞬、どこかに行ったかと思ったら婦長さんと一緒に戻ってきて、婦長さんが一言「心臓が止まっている状態です」。

 

でもね、モニターの数字、呼吸数はあるんよ。

呼吸しているけど脈拍ゼロで心臓が止まってるって、意味わからんわ!

あとで看護師の妹に聞いたら、人工呼吸器を付けているとずっと呼吸はできているんだって。よう知らんけど。

 

そんなバタバタがあったのは14時過ぎ。田舎の妹と私と入れ替わりに、母と看護師の妹が病室に入り、担当医が来て死亡診断書に記入された時間は14時33分だった。心臓が止まっても死亡宣告をされるまでの空白の30分弱やね。

 

葬儀社の人が迎えに来てくれるのを待つ間、会社に連絡をしたり病院のコンビニで死亡診断書のコピーを取ったり、椅子に座ってボーっと過す。看護師の妹は葬儀社の人と一緒に特別に霊安室に入れてもらって、死後のケアのお手伝いをさせてもらっていた。

昨日、事前相談しておいて良かったわ。知らせる人、来てもらう人もおよそ決めていたし。でも、告別式の日時は決まっていないので、どうしたもんかな。とりあえず、その日は父を家に連れて帰り静かに過ごす。いや、バタバタしてたな。何してたか覚えてへんけど。ホンマに何してたか覚えてへん。忘れんうちにこういうのを書こうと思っていたのに、もう忘れてしまっている。たぶん、知らせる人、来てもらう人の名簿を作っていたと思う。妹の婿が、パソコンとプリンターを持ってきてくれたので事務作業用の机もできていた。